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三往生義

平成15年

〔題意〕

 親鸞聖人における三往生の説示を窺い、自力往生との対比によって、他力往生の意義を明らかにする。

〔出拠〕

『本典』「証文類」標挙には

必至滅度之願 難思議往生
とあり、「化身上文類」標挙には、
無量寿仏観経之意
至心発願之願 邪定聚機
双樹林下往生
阿弥陀経之意也
至心回向之願 不定聚機
難思往生
とある。

〔釈名〕

「難思議往生」とは、第十八願他力念仏往生、すなわち顕露彰灼の経である『大経』に説かれる往生である。「難思議」とは「不可思議」の意であり、往生の因果が衆生の思議を絶しているので、「難思議往生」という。
 「双樹林下往生」とは、第十九願自力諸行往生、すなわち『観経』顕説の往生である。「双樹林」とは沙羅双樹のことであり、釈尊入滅の処を意味する。娑婆所現の釈尊にちなみ、化仏所居の土に往生することを、「双樹林下往生」という。
 「難思往生」とは、第二十願自力念仏往生、すなわち『阿弥陀経』顕説の往生である。万善円備する一切善法の本であり、十方三世の徳号の本であるところの名号を称する往生であるから「難思」と名を得るが、本願疑惑の罪によって「難思議」の名を得ることができない。

〔義相〕

 宗祖は、自力往生を双樹林下往生・難思往生と示されるが、また胎生とも示し、自力の行者所入の土を懈慢界・辺地・七宝の牢獄等とも示される。  自力往生とは、「真仏上文類」に

良仮仏土業因千差、土復応千差。
    まことに仮の仏土の業因千差なれば、土もまた千差なるべし。
とあるように、人々各別の生因によって所入の土も人々各別であるという往生である。宗祖は、四十八願中に生因三願が建立されていることに基づき、その三願に真仮を見られた上で、自力往生を諸行による双樹林下往生と念仏による難思往生とに区別されている。生因については諸行と念仏とに大きく区別されるが、人々各別の所入の土については、これを一括して方便化土と示され、また辺地・懈慢界等とも称されるのである。
 難思議往生・双樹林下往生・難思往生の語は、もと善導大師の『法事讃』に出る。『法事讃』には、三経往生区別の微意を示すともとれる文の存在が古来指摘されているが、宗祖は語を『法事讃』に借り、義を転用して三経往生に配当されたのであると見るべきである。
 宗祖における自力往生と他力往生の区別は、『大経』胎化段に基づく。すなわち、仏智疑惑による胎生と明信仏智による化生が対比され、前者には不見三宝の失があるというのが胎化段の説示である。宗祖はこれに基づき果の得失を示すことによって、勧信誠されるのである。


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